2007年7月6日金曜日

ISCAR 第1回国際アジア大会・企画セッション

ISCAR 第1回国際アジア大会
   「活動、学習、人工物のフィールド研究とデザイン」

企画セッション(順不同)

1リアリティのデザイン:何かを見て何かを見ないテクノロジー
企画者:有元典文・横浜国立大学
話題提供:
  土倉英志 (首都大)
  岡部大介 (慶應義塾大学)
  尾出由佳 (東京大学)
  紅林裕子 (横浜国立大学)
コメント杉万俊夫(京都大)茂呂雄二(筑波大)
司会:有元典文
概 要:「障害/行為可能」、「看護師/看護学生」、「職人/徒弟」、「素朴な経験/専門家に意味づけられた事態」、「腐女子/婦女子」、こうしたリアリティ の異なるバージョンの同時性は、リアリティが観察のテクノロジーによって、その都度交渉されるものであることを示している。リアリティとは、見る要素と見 ない要素の複雑な文化的パターンである「星座」に例えられるような観察の実践。ある星座を見るためには、同時に、非常に多くの要素を見ないという実践をす る必要がある。あるリアリティのバージョンを見て取ることは、数多ある様々の要素の選択と無視の実践に他ならない。リアリティが交渉的であり、それ故、揺 るぎなくリアルであることをフィールド調査から示す。

2相互行為のレパートリーの多様性と社会的変異
企画者:朴 東燮Park, DongSeop
所属:釜山大学大学院教育学科 
話題提供
  佐藤公治 北海道大学大学院教育学研究科
  伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究科
  朴 東燮 釜山大学大学院教育学科
コメント:田島信元(白百合女子大学)
司会:茂呂雄二 筑波大学大学院人間総合科学研究科
概 要:本セッションは、相互行為のレパートリーをテーマとする。様々な制度的場面(実験室、幼稚園、家庭、小学校など)には、周囲のArtifactを伴う 身体をベースに、多様な相互行為のレパートリーが存在する。本セッションでは多様な相互行為レパートリーがいかに成立し維持されつつ、他の複数のレパート リーと葛藤し発達していくのかを分析する。
 たとえば、子どもが新しい社会的環境に参入する際、コミュニケーションはどのように再編されるのかと いう問題について、幼稚園と家庭で子どもが行う会話の仕方を比較しながら考察する。また行為者たちがまったく同じ制度的空間(たとえば実験室)ありなが ら、行為の最初期段階から異なるレパートリーに基づいて共同行為に従事する、あるいは特定のレパートリーが行為の展開とともに揺れるありさまを分析する。

3 活動システム理論とは何か:適用の実例と拡張
企画:青山征彦(駿河台大学)杉万俊夫(京都大)茂呂雄二(筑波大)

話題提供:青山征彦:最近の活動システム論の動向
    杉万俊夫:適用可能性の評価をめぐって
    山口悦子(大阪市立大):医療現場への適用
    山口洋典(同志社):エンゼルメイク実践への適用
    東村知子(奈良女子大):教育場面における応用
    香川秀太(筑波大):活動システムの可視化実践
コメント:天野清(中央大学)
     上野直樹(武蔵工大)
司会:青山征彦
概 要:エンゲストロムの活動システム論は、実践現場の記述、概念化にすぐれていて、多数の介入的研究を助けて来たし、新しいアイディアを生み出してもきた。 最近は、活動の対象や情動過程をシステムに導入しさらに拡張をめざす動きもある。このセッションでは、活動システム理論に関する動向を押さえるとともに、 実際に適用した研究事例をもとに、更なる拡張をめざして議論を進める。

4 プレイと想像は学習を拡張する
責任者:宮崎清孝 早稲田大学人間科学学術院 
話題提供
 宮崎清孝(早稲田大学)
 庄井良信(北海道教育大学)
 柏木陽(NPO演劇百貨店)
 藤野有紀(北海道大学)
コメント:
司会:宮崎清孝
概 要:想像活動と学習活動の有機的連関に関するフィールド研究についてのセッションである。幼稚園等における、実践に関して、研究者、実践家、実演家等のそ れぞれの立場から、事例を報告し、プレイにおける創造的な活動が、いかに学習を拡張し、促進するかについて、議論する。

5 「生徒指導/教育相談」実践への社会文化歴史的アプローチ
企画者:松嶋秀明 滋賀県立大学人間文化学部
話題提供:
  加藤 弘通(常葉学園短期大学 保育科)
  川俣 智路(北海道大学大学院 教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
  大久保智夫(香川大学 教育学部)
  松嶋 秀明(滋賀県立大学 人間文化学部)
  岸野 麻衣(福井大学 教育地域科学部)
コメント:
司会:松嶋秀明
【概 要】従来、学校場面では、非行・不登校といった「問題」は、その児童・生徒個人に原因するものとして考えられがちであった。しかし「問題」とはそれをみて とる視点を必要とするという意味で、大人との関係性に埋め込まれたものでもある。わが国においては、教科教育と、生徒指導・教育相談がわかれていないこと が特徴とされることもある。本企画では、学校内で、教科教育場面だけでなく、生徒指導・教育相談といった諸実践を視野にいれて関わっている研究者を集め た。各々の発表を通して、学校で現在おこなわれている実践を、それを支えるモノ・制度・言説などに注目しつつ描き出し、あらためて生徒の呈する「問題」に ついて理解を深めたいと考える。

6 活動理論、ディスコース、エージェンシー
企画者:山住勝広 (関西大学人間活動理論研究センター)
【登壇予定者】
  山住勝広 (関西大学人間活動理論研究センター)
  比留間太白 (関西大学人間活動理論研究センター)
  Fred Anderson (関西大学人間活動理論研究センター)
  山住勝利 (関西大学人間活動理論研究センター)
  島田美千子 (関西大学人間活動理論研究センター)
【概 要】様々な領域における人間の活動は、今日、ますます異質で多様な組織の間での「ネットワーク」「ハイブリッド化」「緩やかな結合」といった形態をとるよ うになってきた。こうした「多重化する活動システム(multiple activity systems)」のコラボレーションは、歴史的に新しい人間活動の形態として、典型的かつ重要なものであるにちがいない。しかし、他方で、そうした越境 的な活動形態は、緊張関係に満ちたものであり、維持しマネージすることが難しいものでもある。本セッションは、こうした人間活動の新たな形態を 'knotworking'(結び目づくり)の概念からとらえ、'critical design agency' の形成や'collaborative intentionality capital'の創造へアプローチする、文化的・歴史的・制度的なディスコースの編成過程を分析しようとするものである。

7社会的実践としての看護、介護:医療領域への状況論的アプローチの実際
責任者:香川秀太 筑波大学人間総合科学研究科 
登壇者
  香川秀太(筑波大学人間総合科学研究科)
  川床靖子(大東文化大学文学部)
  内村美子(厚生労働省九州厚生局健康福祉部医事課)
  豊増佳子(総合研究大学院大学)
  佐伯胖(青山学院大学文学部)
  櫻井利江(筑波大学看護科学系)
   西阪仰(明治学院大学)
【概 要】 医療は、歴史的に構築された理論や知識を媒介し、技術を提供する科学的実践と、表象化困難で、即興的で、感覚的な、ある種のセンスが求められる芸術 的実践とが、ともに織り込まれた領域であると、しばしば表現される。また、医療現場は、看護師、介護師、患者、医薬品会社、政府など、異職種、複数のコ ミュニティが、異なる声を交響させ、協力し、時に衝突する多声的空間でもある。本シンポジウムでは、医療界出身者と、非医療畑の研究者の双方から、状況論 的アプローチにより、医療という複雑な社会的実践を紐解く実例を提示していただく。また、両者の立場や視点の相違についての意見交換もあわせて行い、医療 領域へ状況論を導入することで、何が新しく理解可能となるか(なったか)、論じていく。

8 実習型の授業のヴィデオ・エスノグラフィー
責任者 氏名:樫田美雄 徳島大学 
登壇者(氏名、所属)
  樫田美雄、徳島大学
  岡田光弘、国際基督教大学
  五十嵐素子、光陵女子短期大学
  宮崎彩子、大阪医科大学
  真鍋陸太郎、東京大学
  北村隆憲、東海大学
【概 要】近年、高等教育の場面で、PBLと呼ばれる実習型の授業が広く行われるようになってきました。そうした場面では、どういった活動が成し遂げられ、どう いった人工物が、どのように用いられているのでしょうか。現実の場面で、さまざまなリソースを駆使して、現場を組織するということは、研究者がモデルを立 て研究する理論上の問題である前に、実践に参加している人々にとっての課題だと考えます。本企画では、実習の現場で、参加者たちが、その場面で起きている ことを、たがいに見通しを与えるようにして伝え合っていくことによって、場面に可視性が生じ、実践に埋め込まれた秩序が利用可能になっていくようすを、 フィールドワークとそれに基づくヴィデオ・エスノグラフィーによって明らかにしていきます。
 具体的には、医学部や工学部における実習の場で、さ まざまな活動を作り上げていく「人々の方法」について記述していこうと思います。「議論する」「評価する」「測定する」「教える」などといった活動です。 参加者は、実践に埋め込まれて、実践を可能にしている人工物を活用して、課題に結びついた活動を成し遂げ、さらに秩序を生み出して行くことができます。こ れは、人々が、ふつうに、いつでも、どこでも行っていることです。こうした目の付け所から、学習、教育、授業という活動を「状況に埋め込まれた実践」とし て記述していきます。

9企画名:実践のフィールドワーク
企画者:上野直樹
話題提供
杉万俊夫 京都大学総合人間学部
渥美 公秀 大阪大学大学院人間科学研究科
柳町智治 北海道大学留学生センター
ソーヤーりえこ 大阪大学留学生センター
古沢剛・松村飛志 武蔵工業大学環境情報学部
実践をフィールドワークし、実践のデザインへ関与したり、実践の中で人工物をデザインするための観点を実際の事例をもとに明らかにする。

10事実・体験・コミュニケーション〜共同想起研究の新しい展開に向けて〜
協同想起、実践、

企画者:高木光太郎(東京学芸大学)
話題提供者:高木光太郎(東京学芸大学)
      大橋 靖史(淑徳大学) 
      森 直久 (札幌学院大学)
共 同想起研究において「事実」「体験」は、社会・文化的に枠付けられたコミュニケーションを通して成員が共同的に構築するものとして位置づけられてきた。こ のようなアプローチは「客観的実在としての過去」や「内的表象としての記憶」といった前提から想起研究を解放した点で重要であるが、「共同的な構築」とい う一般的な定式化を越えて、これらの概念を深める試みが十分に行われてきたとは言い難い。その結果、目撃証言や自白など「事実」をめぐって人々が「体験」 を語る実践へのアプローチに一種の「行き詰まり」が生じることになった。このセッションでは刑事裁判をフィールドとしている研究者の報告を手がかりに、こ の状況を打破する新たな研究の可能性について議論する。

11 学習科学の現在:様々なレンジの学習の姿から 
企画 三宅なほみ(中京大学)  
話題提供 三宅なほみ(中京大学)
     白水始(中京大学)
     秋田喜代美(東京大学)
指定討論 佐伯胖(青山学院大学)茂呂雄二(筑波大学)
「学 習活動のプロセス分析に基づくデザイン実験」のようなタイトルで,短期プロセスの分析(45分の授業で何が起きたかの分析),中期プロセス(1セメスタ程 度の学習過程の分析),もう少し長期(2年程度の学習過程の分析)など、多様な学習プロセスから、学習の新の姿を描き出す、その作業を通じて、最近注目を 集めている、学習科学が今後めざすべき方向について議論する。

12企画名:情報デザイン2.0:ネットワーク的観点によるデザイン、コミュニティの変容
企画者 小池星多、上野直樹 武蔵工業大学環境情報学部
安村通晃 慶應義塾大学環境情報学部 教授
上野直樹 武蔵工業大学環境情報学部 教授
小池星多 武蔵工業大学環境情報学部 准教授
概要 
個 々の情報機器の個人としてのユーザのためのインタフェースや情報のデザインに終始した時代「情報デザイン1.0」と呼ぶなら、人々と情報機器、システムを 独立したものではなく、相互にネットワークされているという観点でデザインする時代を「情報デザイン2.0」と呼ぶ。情報技術の発達と以上のようなネット ワーク的観点があいまった情報デザイン2.0時代において、インタフェースデザイン、情報デザイン、そしてそれらを使用したコミュニティの活動はどのよう に相互に変容していくのかをインタフェース研究、フィールド調査、デザイン実践から分析する。

13
企画名:デザイン実践のリソースとしての状況論、ANT
企画者 小池星多 武蔵工業大学
登壇者
大澤晃平・菅原正行(武蔵工業大学環境情報学研究科)

中村佐雅仁(武蔵工業大学環境情報学研究科)
澤田浩二(武蔵工業大学環境情報学研究科)
古沢剛・松村飛志(武蔵工業大学環境情報学研究科)
真行寺由郎

概要
状 況論、ATNは、研究者が人間の活動を記述するための理論的観点を超えて、デザイン実践のリソースになりうる。発表者たちがコミュニティに参加し、道具を デザインし、活動を記述し、活動を再デザインすることを繰り返す実践を事例に、状況論、ATNがデザイン実践の中でどのようなリソースになりうるのかを明 らかにし、またデザイン実践者の立場から状況論、ATNの意味を問い直す。

14 ヴィゴツキー学の現在
企画者=土井捷三(園田女子大学)、神谷栄司(佛教大学)
提案者
 神谷栄司「ヴィゴツキー理論の全体的・発展的理解のために」
 伊藤美和子(大阪外国語大学非常勤講師)「ヴィゴツキーの言語思想」
 西本有逸(京都教育大学)「ヴィゴツキーと第二言語習得をめぐる諸問題」
指定討論者
 佐藤公治(北大)
概要:最近邦訳された情動論をふくめた、ヴィゴツキーの思想の全体像とその発展を明らかにする。

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